エピローグ:Jump to the Future④

「でも、確かヒマリ選手って、前回のオリンピック後に・・・」

 

 アナウンサーがヒマリのことを話し出した。

 

 

 少し離れた山の上からは、動物たちが大会の様子を静かに見ていた。その中には長老猿と大小複数のオコジョもいた。動物たちはヒマリの匂いがするツキハを応援していた。

 

 スタート位置で風が収まるのを待つツキハの横にはコーチを務めるツキハの父がいた。

 ツキハは上着のチャックを少し下げ、胸元から白い尻尾の先が付いているようなネックレスを表に出した。そしてそれを優しく握り、空を見上げた。真っ青な空だった。ツキハはヒマリとの別れを思い出していた。

 

 

 ヒマリは前回のオリンピック後に体調を崩すようになった。ツキハは、ヒマリに子猫のマリの命が継ぎ足されている秘密を知っていた。その継ぎ足した命が尽きようとしていた。

 ヒマリは左耳から聞こえた動物の声が聞こえなくなり、新月の深夜に子猫の姿になるという現象もなくなった。白髪混じりだった髪は完全に白髪となった。そして、体調が悪い時に猫の耳や尻尾が生えてしまい、そんな時は人間の姿に戻るまで誰にも見付からないようにしているようだった。

 

 ヒマリは様々な検査を受けたが特に病気ではなく、老衰に近い状態ということだった。やがて自分の力では歩けなくなってしまった。

 

 

  つづく

 

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