2.2 初めてのウォータージャンプ ②

「分かった。やってみる」

 ヒマリはそう答えると、スキーを閉じてレーンを滑り出した。

 

 ヒマリはジャンプ台の端まで来ると、膝をタイミング良く伸ばしてジャンプした。ヒマリの身体が高く宙を舞い、軸の整ったきれいな放物線を描いて着水した。

 

「なんだ、できるじゃん」

 ユウヤが上から呟いた。

 

 

 ヒマリはライフジャケットの浮力でプカプカ浮きながら、ゆっくりとプールから上がる地点まで泳いでいた。

 その泳ぎ方はジャンプと比較するとお世辞にも上手くなく、水に落ちた動物があがいているようにも見える。

 

 ヒマリがプールから出ようとすると、その先に少女がいた。

 最初にヒマリとユウヤがジャンプを見た少女だった。少女の背はヒマリと同じぐらいだった。

 

「ここ初めて?きれいなジャンプだね!」

 少女がプールから上がって来たヒマリに明るく声を掛けた。

 

「あわゎ。・・・あの、よく聞こえなかった」

 ヒマリは水を滴らせながら驚いて応えた。

 

「えっ?」

 少女は戸惑った顔をした。

 

 バシャン!とヒマリと同じレーンの後方からプールに飛び込む音がした。

 

「そいつ、耳が悪いんだ。ヘルメット被ると、大きい声じゃないと聞こえないんだ」

 ユウヤがプールを泳ぎながら大きな声でフォローした。

 

 

  つづく

 

【目次】【前話】【次話】