4.3 隠されていたこと、これからの友だち ②

 家族間の移植でもない限り、ドナーとレシピエントにはつながりがない。移植後にドナー家族が医師を通じて臓器移植後の様子を聞くことはあっても、直接接触することはない。

 

 オリンピックへの出場資格を得ていた日本を代表するスキー選手が交通事故を起こし、被害者に加害者の妻の心臓が移植された。

 これが知れ渡れば、マスコミが面白可笑しく取り上げる恰好のワイドショーネタになってしまう。そんなことになれば、お互いの家族が巻き込まれて無関係のことまで晒され、幸せな生活はどんどん逃げて行ってしまう。大人たちはそう考えた。

 

 このため、ツキハの父とヒマリの両親が話し合って、事故のお詫びや臓器移植後のお礼を含めて今後はお互いに接触しないと決めた。そして、偏った情報で子どもたちが誤解しないように、移植のことだけでなく、事故の相手についても子どもたちに話さないことにしていた。一方的に親が子どもを思ってのことだった。

 

 ただ、こんなタイミングで再会するとは思っておらず、ツキハの父は昨年の夏にウォータージャンプで会った後、きちんと話すべきだったと反省していた。

 

 ツキハの父が説明を終えた。

 

 

  つづく

 

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