6.3 オコジョの森を賭けた子猫の誓い ⑥

 人間の姿に戻るまで通路で過ごそうと思っていたが、ユウヤが居る部屋のドアが開いた。誰かがトイレに起きたようだった。

 ヒマリは見つからないように、子猫の姿のままでその部屋に忍び込んだ。そして寝ているユウヤを見つけると、顔を近付け頬っぺたをペロッと舐め、ゆっくり布団の中に潜り込んで行った。

 

 

 朝、部屋の中にユウヤの悲鳴のような声が響いた。裸のヒマリがもぞもぞとユウヤの布団の中から出て来た。

 

「ごめん。トイレの帰りに寝ぼけたみたい」

 ヒマリは頭を掻きながら笑ってごまかした。

 

 

 早朝のスキー場では、係員がゲレンデ整備の際に、幾つもの動物の足跡を見つけた。その足跡にはツキノワグマと思える大きなモノもあった。

 係員はクマの出没を知らせる報告を直ぐ上司に上げた。ただ、「冬眠から覚めたクマが夜に山の下まで降りて来て、再び巣に帰ったのだろう」ぐらいで済まされ、『クマ出没注意!』の張り紙だけが何枚も用意された。

 動物たちが暴れようとした痕跡は、圧雪車がゲレンデをキレイに整備して消して行った。

 

 そして、スキービックエア競技の大会当日を迎えた。

 

 

  つづく

 

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