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動画をUPしました。3.6 八王子から伊香保の道のり⑤

 私たちは一日に30kmぐらいを歩いては寺社に泊めて貰って移動を続けました。四人での旅でしたが、望月千代女の周囲には巫女姿の女性が時々姿を見せていたので、何かしら武田方と連絡を取っているようでした。

 あと一日で沼田という所まで来て、私たちは望月千代女の提案で旅の疲れを取るために少し寄り道をして伊香保温泉に宿泊することにしました。

 

 温泉に入った後で夕食を頂いていると、宿の方が望月千代女に手紙を渡しました。

 

「道澄様、先に行った玄蕃から手紙が来て、沼田城で上杉輝虎様があなたと会えるのを心待ちにしているそうですよ」

 

「そうですか…」

 私はセオリさんに似た上杉輝虎に抱き着かれた夢のことを思い出しました。

 

「長尾景虎だった頃からの仲で、道澄さんの理想の存在なんですよね?」

 コノハさんが訊ねました。

 

「越後の龍と呼ばれる方ですから、さぞ勇猛な方なんでしょうね」

 二郎が厳つい大男をイメージしているのがよく分かりました。

 

 私は京都にいる頃からの道澄の記憶を辿ってしまい、輝虎殿が長尾景虎として上洛した頃からの関係が何となく分かります。深く探るようなことはしていませんが、とても複雑な関係のようです。ただ、コノハさんや二郎にはちょっと言えないと思ってしまいました。

 

「何か訳アリですね。お酒を飲みながら少し聞かせて貰いましょうか」

 千代女が意地悪く言いました。



  つづく