『なあ、お前、大丈夫なのか?勝てるのか?』
オコジョの子が心配そうに話して来た。
『勢いで言ってしまったけど、分からない。この姿の時って調子に乗っちゃうんだ。どうしよう?』
ヒマリは不安そうに答えた。
『神様のお言葉であれば、何の異存もありません』
長老猿は大木に向かって頭を下げた。
『黙って見ていれば、わたしの血を引く子に何をするんだい?これ以上はクマだろうとわたしが許さないよ!』
三毛猫の霊はみるみる大きくなり、ツキノワグマと同じぐらい大きな化け猫となった。
『明日のお祭り、誰が一番上手に飛べるか競争です。その競争に勝ったら人間の偉い人と話ができます。だから、それまで待ってください。競争に勝って、森を残して欲しいって、みんなの願いを伝えるから!』
ヒマリは必死に頼んだ。
ヒマリは、大会で使うキッカーの方に向かって行く動物たちを止めたかった。ツキノワグマやイノシシが暴れたら、ジャンプなどできる状態ではなくなってしまう。
『いいぞ、いいぞ!』
『オラもやるぞ。人間に一泡吹かせてやる』
鹿やイノシシが応えた。
『人間と戦うつもりなのかい?』
ヒマリは訊ねた。
『怖いから、戦いたくなんかない。でも、どうなるか分からない。みんな怒っているし・・・』
オコジョの子が小さく答えた。
子猫のヒマリは集会の輪から少し外れた所にいるオコジョの子どもを見つけ、ゆっくりと近寄って行った。
『それにこの森を無くしたら、また別の森を無くそうとするに違いない。人間は強欲なんだ。何れ山から一本も木が無くなってしまう。だから今、人間を懲らしめなきゃダメだ!!』
ヒマリの全身を淡い光が包み、フッとそれが消えた途端、パサッと音がしてヒマリが着ていた筈のジャージが通路の床に落ちた。