「本当に師弟の間だけですか?」
かなり酔っている千代女が私にしつこく聞いて来ます。
「和歌に関しては道澄の方が私の師だ。それに道澄には呪術で何度も危ない所を助けて貰っている。道澄一人で千人力、いや、万人力だ。私は師弟ではなく、同志だと思っている」
「ふーん、同志ねえ。でも、輝虎様、あなた本当は一人の女として道澄様が好きなのでしょう?」
千代女が酔った勢いで誰も口に出せなかったことを言いました。
「女とか男とか関係なく、道澄は私の大切な存在だ。好きも嫌いもあるか!何か文句があるのか?」
輝虎殿が千代女を睨みました。
「いいえ。文句などありませんよ。でも単なる大切な存在なら道澄様は私が貰っても構いませんね?」
千代女が私の腕を掴んで抱き着き、私は身体を引いて離れようとしました。
「ふん。嫌がっているだろ。道澄がお前なんかに興味を持つものか!なっ、道澄」
輝虎殿が私に同意を求めて来ました。
「巫女が僧と神仏習合をしたっていいじゃないですか」
千代女が更に擦り寄って来ます。
「道澄から離れろ、千代女!道澄もデレデレするな!」
輝虎殿は怒り出して千代女と反対の私の腕を掴んで引っ張ります。
つづく