
「亡者を操り、人を襲う神になど、お仕えした覚えがありません。諏訪神社の巫女として、お鎮めに参りました」
千代女さんが答えました。
「私を鎮めるだと。ここは龍穴の中、人間如きに何ができる」
「道澄、この蛇女を退治すれば良いのか?」
「そうです。輝虎殿」
「輝虎だと?」
「そうだ。この上杉輝虎が水神切兼光の太刀を持ってお前を成敗しに来た」
「たかが意識を失った女一人を救うために、上杉輝虎が浅間山まで来たのか?」
下半身が蛇の女性はそう言って笑い出しました。
「道澄、もう斬って良いか?」
輝虎様は刀を抜き、振り被りました。水神切りの刀がキラリと光りました。
「まぁ待て、上杉輝虎。それに道澄。そなたたちは只者ではない。また、そこの女もこの世の者ではなく、価値が知れ渡れば女を巡って争いも起こるだろう。しかし、代わりに倒れた女に、そなたたちがここまでする価値があるのか?」
「アキは平凡な女の子かも知れません。でも私にとっては大事な人です。人の命に価値の違いなど私はないと思います」
私は下半身が蛇の女性に言い返しました。
つづく
