私は鏡の泉の前で腰を屈め、水面を覗き込みました。最初は私の姿がぼんやり映っていましたが、それが別の誰かの姿に変わりました。そして私が手を伸ばすと映った手に掴まれて泉の先に引かれました。
私が気付くとそこには河口湖で会った男性が手を引いていてくれていました。そこにはアキも道澄さんもいません。
「鎌原村ではごめん。でも、上手く行ったようで良かった」
「こっちに来てくれていたんですね。鎌原村では朝になったら元の道澄さんになっていてビックリしましたよ」
「必要なことは道澄と共有したから彼の方が私より上手くやるんじゃないかと思った」
「そうですね。あれからの道澄さんは凄かったですよ」
そう言って私が笑うと彼も笑いました。
「コノハさん!」
遠くから私を呼ぶ先生の声がしました。
「じゃあ、私は行くね。コノハさんがここまで無事に戻れて良かった。次は川場の朝食会場かな?」
彼はそう言って去って行きました。
先生や同級生たちが私に近寄って来ました。
「コノハ、急に姿が見えなくなったから心配したよ」
「ごめんなさい。ちょっと旅をしていました」
私は先輩にそう答えました。
夕日が目に差し込んで来ます。私は心地良い眩しさを感じました。
つづく