「分かった。やってみる」
ヒマリはそう答えると、スキーを閉じてレーンを滑り出した。
ヒマリはジャンプ台の端まで来ると、膝をタイミング良く伸ばしてジャンプした。ヒマリの身体が高く宙を舞い、軸の整ったきれいな放物線を描いて着水した。
「なんだ、できるじゃん」
ユウヤが上から呟いた。
ヒマリはライフジャケットの浮力でプカプカ浮きながら、ゆっくりとプールから上がる地点まで泳いでいた。
その泳ぎ方はジャンプと比較するとお世辞にも上手くなく、水に落ちた動物があがいているようにも見える。
ヒマリがプールから出ようとすると、その先に少女がいた。
最初にヒマリとユウヤがジャンプを見た少女だった。少女の背はヒマリと同じぐらいだった。
「ここ初めて?きれいなジャンプだね!」
少女がプールから上がって来たヒマリに明るく声を掛けた。
「あわゎ。・・・あの、よく聞こえなかった」
ヒマリは水を滴らせながら驚いて応えた。
「えっ?」
少女は戸惑った顔をした。
バシャン!とヒマリと同じレーンの後方からプールに飛び込む音がした。
「そいつ、耳が悪いんだ。ヘルメット被ると、大きい声じゃないと聞こえないんだ」
ユウヤがプールを泳ぎながら大きな声でフォローした。
つづく