3.3 あの時の事故の後で ⑥

 ツキハの父が警察での取り調べを終え、保釈されて病院に駆け付けた時には、ツキハの母は脳死状態になっていた。病室で眠ったままの妻の姿を見ていると、ツキハの父は医師に呼ばれた。

 そして、ツキハの父は、ヒマリは心臓移植をしなければ助からず、ドナー登録をしているツキハの母の心臓が適応すると聞かされた。ツキハの父は悩んだ末にドナー提供することを同意し、ヒマリにツキハの母の心臓が移植された。

 ツキハの父は、事故の責任を取った上で、選手を引退した。

 

 

 ツキハの父は、語り終えると頭を下げた。ツキハの顔は涙で濡れている。

 

「そんな大事なこと、お父さん一人で抱え込まないでよ」

 ツキハは涙をポロポロ零しながら笑顔で応えた。

 

「ごめんな」

 ツキハの父も泣いているようだった。

 

「私だって理解できるよ。お母さんの心臓でヒマリくんが助かったのなら、私は嬉しいよ。ちょっとドキドキしちゃったから、外の空気を吸って来る」

 そう言ってツキハは部屋の外に出た。

 

 ツキハは部屋のドアを閉めると、そのドアに背中からもたれ掛かって天井を見上げた。

 

「お母さん」

 ツキハが小さく呟いた。

 

 

  つづく

 

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