5.2 捨てられた猫の丑の刻参り ②

『せっかく病院ができたのなら、そんな酷いことをしないで、お母さんの病気を治してくれればいいのに』

 

『わたしも、最近できた病院に一度だけ連れて行って貰ったよ。だけど、病気を治すのは難しいらしいよ。でも、大して痛くないからね。まぁ、ご飯が食べ難くなってしまったけど』

 三毛猫は舐めるのを止めて、ゆっくりと応えた。

 

『最後に生んだ子どもたち、今頃どうしているだろう?』

 子どもの白黒の猫は頭を上げ、首を伸ばして窓の外を見た。

 

『どうしているだろうね』

 三毛の母猫は再び丸くなった。

 

 三毛の母猫は自分の子どもの多くが捨てられたことを、子どもの白黒の猫に教えていなかった。そして、大きくなった子どもが母となって子猫を生んだ後、孫に当たる子猫の多くが同じように連れて行かれても、それが捨てられることを意味するとは言えなかった。

 そんなことを言っても娘を悲しませるだけで、何も解決しない。三毛の母猫は辛い思いを自分の胸の奥にしまっていた。

 

 

  つづく

 

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