「だったら無理に踏み切らず、自然に抜けてエアターンをすればいい」
ハルトはユウヤの方を向いて静かにアドバイスした。
「エアターン??」
意味が分からないユウヤはハルトの顔をしっかりと見た。
「お前はハーフパイプをしたことがないのか?」
「ない」
「そうか。まあキッカーでハーフパイプのようにエアターンはできない。ハーフパイプのエアターンの要領という意味だったんだが、大事なのは視線、ライン取り、そして姿勢だ」
ハルトがそう話した時にはリフト降り場に着いていた。
リフトを降りたユウヤは、ハルトにキッカーでカービングをして踏み切る方法を教えて貰うことになった。スタートエリアに向かう途中で二人はスキーを外して斜面に立ち、その場で踏み切るポーズを何度も何度も取っていた。
「こうか?」
「違う。こうだ」
「そうか。こうか?」
「もうちょっと。こうだ」
「こう?」
「そうだ」
ハルトは大会の最中ということを忘れているかのように、ユウヤに熱心に身振り手振りで指導をしている。そこにミコトが近づいて来た。
「二人とも、そろそろ並ばないと、2本目の順番が来るよー」
ミコトが近付きながら呆れたように声を掛けた。
つづく