「だって、まだ森ではオコジョの家族が暮らしているから。オコジョの棲み処を奪いたくないからです。それに山の神様の木もあるし」
ヒマリはそう答えた。
「オコジョって、オコジョを見たのかい?ウサギやリスじゃなく?」
「はい。自分でオコジョって言ったので」
「自分でオコジョって言った?」
彼はヒマリの答えが理解できなかった。
「ヒマリくんって、不思議な耳を持っていて動物の声が分かるみたいなんです。ねっ!」
ツキハがフォローした。
「うん。声が分かるんです。余り詳しくは言えないけど、森のオコジョだけじゃなくて、山の上に棲む動物たちも人間に怒っています」
ヒマリはそう続けた。
彼は微妙な顔になった。
「う~ん、よく分からないなー。この森のオコジョはもう何年も誰も姿を見ていないんだよ。ぼくが時間を掛けて調査しても一匹も見つからなかったんだよねー」
彼は話を始めた。
このスキー場はスキーブームより前に開業し、自然との共生をめざして森を残してゲレンデが作られていた。スキーブームの頃に山全体にゲレンデを拡張したが、いつしか冬も夏もオコジョのいた森では動物たちが姿を全く見せなくなった。
つづく