第1章 現代編:新谷真希の観察日記

第2話 京都、そして遺跡巡り


20XX年9月2日

 

 新幹線ホームでの待ち合わせ、先生が全然来ない。指定席を取ってあったが、乗り損ねて自由席での移動となる。

 新幹線の中で、ここで行う調査の詳細を先生から聞いた。神社から何やら隠れキリシタン関連の遺物が見つかったらしい。

 

 ようやく京都に到着した。遺物が見つかった神社への訪問は翌日で、今日の目的地は京都国立博物館らしい。だけど、澄川先生はすぐに観光モード全開。京都駅から直接向かえば近いのに、あちらこちらに寄り道をしながら博物館に行こうとする。調査とは一体……?

 

 錦市場での出来事:

「先生、ここは一体?」

 

「錦市場だよ。調査に必要なエネルギー補給をする場所だ!」

 

 澄川先生はそう言って、いろんな屋台で食べ物を買いはじめる。

 

「これって、ただの食べ歩きじゃないですか……」

 

 妙心寺まで移動:

 駅まで南蛮寺跡を通って徒歩で移動し、妙心寺に到着。先生が偉そうなお坊さんと話して、古い鐘を見せて貰う。紋章と刻まれた文字をよく見ておくように言われた。「IHS」って、何の意味だろう?

 

 大徳寺でのポーズ:

 タクシーを使って大徳寺に移動。本当はバスで移動したかったけど、私も疲れたので仕方ない。大徳寺に到着すると、庭園を見て回り、先生はいきなりスマホを出して自撮りをはじめる。

 

「先生、それって何のために?」

 

「記念に一枚! これも調査の一環だよ。庭の形が面白いでしょ」

 

「確かに変わっていますが……。記念写真、撮りましょうか?」

 

 三十三間堂でのおみくじ:

 

「おみくじを引いてみよう!」

 

 先生がおみくじを引いて「大吉」。

 

「見てみろ、大吉だ! これでいい調査ができる」

 

「先生の調査は、おみくじで結果が変わるんですか?」

 

 ようやく京都国立博物館に到着。先生は何を考えているのか、歩き疲れているのに館内ではなく、庭園の方に進んでゆく。屋外展示されている石を眺めて満足そうな顔。私はただただ呆れるしかない。

 

「先生、ここが今日の目的地って、これって今回の調査とどう関係があるんですか?」

 

「それはこれからだよ。見てごらん、お墓とは思えない形だろう」

 

 博物館構内の西の庭にある古い小さな石碑。先生がそこに目をつけたのは、この墓碑が何かの手がかりになる可能性があるからだという。

 

「かまぼこみたいな形ですね」

 

「この墓碑には、キリシタンにしかわからない、メッセージが刻まれているらしいんだ。今日見てきたモノ、みんなそうだ。具体的に何につながるかは、これからの調査で明らかになるだろう。真希ちゃんは、採用試験を兼ねたクイズに全問正解したんでしょ、それだったら、きっと役に立つよ」

 

 私は勘が鋭いけれど、深く考えて推論するのは苦手。今更、クイズが選択問題だったから、直感で正解したとも言えない。当てるのは得意だけれど、ちょっと期待と不安が交錯する。

 

「先生、もしかして、今日の観光って、私にキリシタン関連の場所を見せるためですか?」

 

「そうだよ。ほら、事前にイメージできた方がいいだろう」

 

「ありがとうございます。ただの観光だと思っていましたが、錦市場での食べ歩きにも、きっと意味があったんですね!」

 

 そう言うと先生は黙ってしまった。少しだけ感謝したが、やっぱり調査を名目に観光をしたかったに違いない。

 

 ホテルにチェックインをすると、先生は「古い友達と飲んでくる」と言って出かけてしまった。

 

 京都での1日目が終わった。先生は遊びに来たような振る舞いをしていたけれど、意外に私のことを気遣ってくれていた。ちょっとだけ先生を見直してしまった。

 この調査、ただでは終わらない気がする。きっと明日には、それが確信に変わるのだろう。こういう勘が私は妙に冴えているのだ。いずれにせよ、何か大きな変化が起こる気がしてならない。

 

 今日の一言:

 先生を少しだけ見直してしまった。先生のだらしなさに呆れるが、その独自の行動が何か大きな発見につながるのかもしれないと思いはじめた。それが楽観的な考えなのか、単なる甘い期待なのかはまだわからない。

 

 次の日の予定:

 依頼のあった神社で遺物を見せて貰う日。それが何につながるのか、どういう背景があるのか。全てはその神社で明らかになる。楽しみで、同時に何か重大なことが起きそうで怖い。でも、それが調査の醍醐味よね。

  

【目次】【前話】【次話】