コースの中に幾つもの自然の木々が茂っていて、スピードを出した滑りはできない。しかし、このスキー場で人気の林間コースで、森の息吹を感じながら木と木を縫うように滑ることができた。
コース下のリフト乗り場の横で待つユウヤとツキハの所に、ヒマリが少し遅れて姿を見せる。
「ヒマリくんって、本当にスキー場で滑るのが初めてなの?」
ツキハが驚きながら言った。
「本当みたいだけど、ちょっとシャクに障る」
ユウヤは呆れたように言った。
ヒマリは二人の前で両足を揃えてスキーのブレーキを掛け、左足を前に「シュッ」と止まった。
「ヒマリくん、すごく上手く滑れるじゃない。初めてとは思えないよ」
ツキハが声を掛けた。
「えっ、ごめん。よく聞こえなかった」
横を向いていたヒマリがツキハの方を向いた。
「あっ、私こそゴメンなさい。ヒマリくんって左耳が聞こえないんだっけ」
ツキハが謝った。
つづく