
「じゃあ、そうしよっか」
と母親が言うと、
「やったー!」
と拳を握り、ユウヤは坂の下に向かって走り出した。
「待ってよ~」
ヒマリも後を続いた。
「走ると危ないわよ~」
と母親が声を掛けた。
その声が届くか届く前かのタイミングで、ユウヤが転びそうになりながら止まり、慌ててヒマリも停まった。
「ユウヤ、どうしたの?」
「見ろよ、あの子」
ユウヤは左側のジャンプ台で構える少女の方を指さした。
そこにはヒマリと同じぐらいの小さい少女がヘルメットを被り、ライフジャケットを身に付けて今にもスキーで滑り出そうとしていた。
幅の広い滑り台のようなレーンは、薄い緑色の目の粗い人工芝が張られ、所々にスプリンクラーがあって濡れた状態が保たれている。滑り台の先はジャンプ台になっていて、その先には何もなく、プールに飛び込むようになっていた。
スタート位置に立つ少女が右手を大きく上げ、隣のレーンの人に自分の番だという合図を送った。ブレーキを掛けるために開いていたスキーを揃え、スキーが人工芝の上を走り出す。
スキーは段々とスピードを上げてヒマリとユウヤの横を過ぎ、ジャンプ台の先端で少女が大きく空に飛んだ。二人はその姿に見惚れていた。
つづく