2.1 遊園地のプールじゃないの? ③

「じゃあ、そうしよっか」

 と母親が言うと、

 

「やったー!」

 と拳を握り、ユウヤは坂の下に向かって走り出した。

 

「待ってよ~」

 ヒマリも後を続いた。

 

「走ると危ないわよ~」

 と母親が声を掛けた。

 

 その声が届くか届く前かのタイミングで、ユウヤが転びそうになりながら止まり、慌ててヒマリも停まった。

 

「ユウヤ、どうしたの?」 

 

「見ろよ、あの子」

 ユウヤは左側のジャンプ台で構える少女の方を指さした。

 

 そこにはヒマリと同じぐらいの小さい少女がヘルメットを被り、ライフジャケットを身に付けて今にもスキーで滑り出そうとしていた。

 

 幅の広い滑り台のようなレーンは、薄い緑色の目の粗い人工芝が張られ、所々にスプリンクラーがあって濡れた状態が保たれている。滑り台の先はジャンプ台になっていて、その先には何もなく、プールに飛び込むようになっていた。

 

 スタート位置に立つ少女が右手を大きく上げ、隣のレーンの人に自分の番だという合図を送った。ブレーキを掛けるために開いていたスキーを揃え、スキーが人工芝の上を走り出す。

 スキーは段々とスピードを上げてヒマリとユウヤの横を過ぎ、ジャンプ台の先端で少女が大きく空に飛んだ。二人はその姿に見惚れていた。

 

 

  つづく

 

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