2.3 ウォータージャンプをしながら花火大会見物 ⑤

「お父さ~ん!」

 ツキハが大きく手を振った。

 

 彼はツキハに気付き、手を上げて応えた。彼は構えを取り、スタートを切ろうとしていた。

 

 その時、ツキハがベンチに戻って来たヒマリに気付いた。

 

「ヒマリく~ん、こっち!」

 手を振りながら大きな声でツキハが呼び掛けた。

 

「ヒマリ、こっちこっち」

 ユウヤは更に大きな声で続いた。

 

 ヒマリは二人の呼び掛けに手を振って応えた。

 

 

『ヒマリ、ヒマリって・・・』

 ツキハの父はジャンプ台の先のプールサイドで手を振る子どもの姿に目を向けた。

 

 そこには忘れようのない目に焼き付いた顔があった。

 

『あの時の子どもか!』

 

 そして彼は、視線を戻さないままの状態でスタートを切ってしまった。

 

 

 ツキハの父は不安定な助走でバランスを崩し、踏切の直前で飛ぶのを止めようとして転倒した。

 

 施設に怒声と悲鳴が響いた。

 

 

 ツキハの父は身体の裂傷と転倒時に腕を捻ったようだった。骨折まではしていないようだったが、大事を取って応急手当をしてから病院に行くことになった。

 

 ツキハは泣きながら二人に謝り、父ともう一人のコーチと共に施設を後にした。

 

 

 夜になり、遊園地の花火大会がはじまった。

 

 ヒマリとユウヤは二人だけでウォータージャンプをしながら花火を見ていた。

 

 

  つづく

 

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