「お父さ~ん!」
ツキハが大きく手を振った。
彼はツキハに気付き、手を上げて応えた。彼は構えを取り、スタートを切ろうとしていた。
その時、ツキハがベンチに戻って来たヒマリに気付いた。
「ヒマリく~ん、こっち!」
手を振りながら大きな声でツキハが呼び掛けた。
「ヒマリ、こっちこっち」
ユウヤは更に大きな声で続いた。
ヒマリは二人の呼び掛けに手を振って応えた。
『ヒマリ、ヒマリって・・・』
ツキハの父はジャンプ台の先のプールサイドで手を振る子どもの姿に目を向けた。
そこには忘れようのない目に焼き付いた顔があった。
『あの時の子どもか!』
そして彼は、視線を戻さないままの状態でスタートを切ってしまった。
ツキハの父は不安定な助走でバランスを崩し、踏切の直前で飛ぶのを止めようとして転倒した。
施設に怒声と悲鳴が響いた。
ツキハの父は身体の裂傷と転倒時に腕を捻ったようだった。骨折まではしていないようだったが、大事を取って応急手当をしてから病院に行くことになった。
ツキハは泣きながら二人に謝り、父ともう一人のコーチと共に施設を後にした。
夜になり、遊園地の花火大会がはじまった。
ヒマリとユウヤは二人だけでウォータージャンプをしながら花火を見ていた。
つづく