3.3 あの時の事故の後で ②

「いや、大会のことじゃない」

 

「じゃあ、何?」

 

「去年の夏、父さんはウォータージャンプで転んでしまっただろう?それは何故だと思う?」

 

「えっ、そんなの分からないよ」

 

「入院していたお母さんが危篤になった日、父さんは交通事故を起こした」

 ツキハの父は噛み合わないまま話を続けた。

 

「それが何の関係があるの?あの事故は、私がお父さんに早く病院に行きたいって無理を言って、急がせたから」

 ツキハは目を合わせない父の顔を見ながら少し強い口調で応えた。

 

「いや、事故はツキハのせいじゃない。ツキハが悪いんじゃない。私の運転ミスだ」

 ツキハの父はようやくツキハと目を合わせ、宥めるように言った。

 

「どうして今、そんな話をするの?」

 ツキハは父を睨みながら更に強い口調で訊ねた。 

 

「その事故が関係あるんだ」

 ツキハの父はその目で何かを伝えようとしているようだった。

 

「えっ、もしかして・・・」

 ツキハは言葉に詰まった。

 

 

  つづく

 

【目次】【前話】【次話】