3.3 あの時の事故の後で ③

「あの事故の相手がヒマリくんなんだよ」

 

「ヒマリくんが事故の相手?そうだったの。私、全然知らなかった。私も車に乗っていたのに・・・」

 

「無理もない。一瞬の出来事だったし、事故の処理からツキハを遠ざけたのは私だから」

 

「だったら去年のウォータージャンプで教えてくれれば良かったのに、どうして?あの事故では相手に大きな怪我をさせていないって、お父さん言ってたじゃない。それも違うの?」

 ツキハの顔は少し青ざめていた。

 

 ツキハの問いに父は再び目を逸らし、暫く何も答えなかった。やがて意を決したようにツキハの顔をしっかりと見た。

 

「実は、もう一つ、ツキハに黙っていたことがある」

 そう言って、ツキハの父は当時の出来事を静かに話し始めた。

 

 ツキハの父がワールドカップで活躍するようになった頃、ツキハの母は体調を崩した。病院で精密検査を受けるとステージが進んだ乳ガンだった。

 

 

  つづく

 

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