4.1 あの子に話したあの頃の幼馴染 ⑥

 ユウヤは事故の一部始終と、事故後に慌てて車から降りて来た男性の姿を見ていた。それに顔は見ていないが車の中に女の子がいたことを知っていた。

 

 ウォータージャンプでは、ツキハの父が怪我をして応急手当を受けている際に、ヒマリの母が近くに行ってツキハの父と話しているのをユウヤは目撃していた。その時に見たサングラスを外したツキハの父は、事故後に車から降りて来た男性と同じ顔をしていた。

 

 ユウヤは、ツキハの父がヒマリの事故の加害者だと分かっている。

 

 しかしユウヤは、自分の親からもヒマリの母からも、そのことをヒマリに教えないように頼まれていた。なぜ親たちがヒマリに隠すのかユウヤには分からなかった。それでもユウヤは、親がどうこうではなく、ウォータージャンプで仲が良くなったツキハのために、ヒマリには黙っていようと決めていた。

 

 そして今夜、ツキハが悩んでいる様子を見て、その気持ちを一層強くした。

 

 なぜならユウヤは、大人の事情など関係なく、上手く行っている三人の関係を壊したくなかった。だから、ユウヤは敢えて触れないようにしようと思った。

 

 ただ、ヒマリだけは何も知らされていなかった。

 

 

  つづく

 

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