5.2 捨てられた猫の丑の刻参り ①

 広い庭を持つ小さな家の周りには、畑がなくなり沢山の家が建っている。玄関の横には犬小屋があり、庭の端にはインコやニワトリの入った鳥小屋とウサギ小屋もあった。

 

 小さな家の中では、川に捨てられずに一匹だけ残された子猫が、母猫よりも大きな白黒のメス猫に育っていた。母猫の三毛猫の方は歳を重ね、以前のキレイな毛並みではなかった。身体全体が汚れ、口の中に腫瘍ができ、いつも涎を垂らすようになっていた。

 

 窓から光が注ぐ部屋の隅に、親子の猫が身体を寄せ合って丸くなっていた。

 

『お母さん、幾ら歳でも少しは毛繕いをして、身嗜みに気を付けなきゃ』

 子どもの白黒の猫は身体を起こし、母猫の背中を舐めてあげた。

 

『わたしはどうでもいいんだよ。もう寄って来るオスなんていないしね』

 三毛の母猫は丸くなったまま、尻尾を気持ち良さそうに動かしている。

 

『それは同じだよ。あー、もう一度ぐらい子どもを産みたかったなー』

 白黒の猫は舐めるのを止め、小さく嘆いた。

 

『そうだね。お前はもう子どもを産めない身体にされちゃったんだねぇ』

 今度は三毛の母猫が子どもの猫の身体を舐めた。

 

 

  つづく

 

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