7.6 涙のハートビート! ⑥

 ミドルキッカーのスタート位置に立ったヒマリは、何も考えられず、ただ遠くへ飛びたかった。

 

 ヒマリがスタートをした。

 

 お昼休みに手入れをしたWAXが合っているのか、ヒマリのスキーは予選よりもスピードに乗っている。そして小さい身体から大きく踏み切った。そして宙返りも横軸に捻った回転もなく、ただ高く遠くに飛んだ。何も考えず、真っ直ぐに泣きながら飛んでいた。

 

「あいつ、何やってるんだ!」

 ユウヤは高く上がったヒマリを見て叫んだ。

 

「あれでは完全にオーバーだ!」

 隣にいるハルトもそう叫ぶ。

 

 着地エリアは、着地自体をする部分と、着地をしてから安全に止まるまで滑走する部分に分かれている。着地自体をする部分は衝撃を逃がすためにスロープ状になっていて、キッカーの大きさに応じて長さや角度が異なっている。一方、滑走する部分は平らになっていた。

 

 

  つづく

 

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