「少し運動ができるだけで、ボクは他に何かできる訳じゃない。優勝できたってオコジョの森を守れるか分からない」
ヒマリはツキハから視線を外した。
「私、ヒマリくんの気持ち、全然考えてなかった。簡単じゃないよね。でも、あと少し頑張ろうよ。サポートが必要かも知れないから私もスタートエリアに入ろうか?」
ツキハはヒマリを見ていた。
「ボクなら大丈夫だよ」
ヒマリは遠くを見たまま小さく応えた。
「そう。じゃあ、またヒマリくんとユウヤのお母さんの所で観ていようかな?」
ツキハも遠くを見ながら小さく言った。
「そうだね」
ヒマリの返事は少し冷たかった。
リフトを降りたヒマリがツキハと分れてスタートエリアに来ると、ユウヤが迎えてくれた。
「あれ?ツキハは?こっちに来なかったの?」
一人だけで来たヒマリを見て、ユウヤが訊ねた。
「うん。あっ?ユウヤは来て欲しかった?ボクが断っちゃった」
ヒマリは慌てて答えた。
つづく