三人はヘルメットとスキーブーツを脱いで観客席のベンチに並んで座った。そしてジュースを飲みながら休憩した。ツキハが真ん中で、右にユウヤ、左がヒマリだった。
ツキハは二人にコーチをしている父親のことを話した。ツキハの父はプロのスキーヤーで、以前はワールドカップで何度か入賞したこともあり、オリンピックの代表候補だったらしい。ツキハにとっては自慢の父で、自分の夢は父にオリンピックに出る姿を見せることだと二人に語った。
ヒマリとユウヤにはオリンピックと聞かされてもピンと来なかった。まるで違う世界の話に思えた。
「ヒマリくん、あなたはオリンピックに出れちゃうかもよ」
ツキハが左を向いて笑顔で言った。
「えっ、オリンピック?そんなこと考えられないよ」
ヒマリは笑って答えた。
「ちゃんと練習すればあるかもよ。体操だって、上のクラスに行けば選手になれるって言われているんだし」
ユウヤが身を乗り出して言った。
「ムリムリ。ボクは厳しい練習なんてできないもん」
「だよな」
ヒマリの答えにユウヤは笑った。
ツキハは惜しいという顔になった。
それからヒマリとユウヤはツキハに遊園地の花火大会を見学することを話した。
「そうそう。ここから花火が見えるんだよ」
ツキハが二人に言った。
つづく