『いいだろう。ならば尽き掛けた人の子の命に子猫の命を継ぎ足し、既に心が泡と消え掛かっている人の子の器に子猫の心を移してやろう』
白い空間の中、どこからか声が聞こえた。
『本当ですか?ありがとうございます。でも、人の子の心は救えないのですか?』
『二つの心を一つにはできるが、なぜ人の子の心まで救いたい?』
『愚かだったわたしのせめてもの罪滅ぼしです。わたしは地獄にでも参ります』
『いいだろう。お前が霊となっても最期まで恨み続けるのであれば、お前を地獄に叩き落としてやるつもりだった。悔いているのであれば、この呪いの行き着く先を最後まで見届けるがいい』
『ありがとうございます。ありがとうございます』
猫の霊は繰り返しお礼を述べた。
『子猫のマリよ、人の子のヒマリと一つになるがいい』
『マリ、ヒマリの元へお行きなさい。そしてヒマリと共に人として生きなさい』
そう言って三毛猫の霊は姿を消した。
深夜、ヒマリは悲しい夢を見て目を覚ました。しくしく泣きながら起き上がると、姿が朧になっていた。ヒマリはドアを開けて部屋の外に出た。
つづく