ヒマリは直感的に、オコジョの子どもに「力になれない」と話したことが原因かも知れないと思った。
以前、似たようなことがあった。ヒマリはそのことを思い出した。それは棲み処を追われたカヤネズミの家族のことだった。
ヒマリは家族からヒマリが生まれる前の畑の中の小さな家の写真を見せて貰ったことがある。本当に見渡す限りが畑と雑木林だった。それが段々と家が建って、工場ができて、倉庫が建ってと、変わって行ったらしい。ただ、ヒマリの家の隣には僅かな雑木林が残されていた。
その雑木林の土地が売られ、アパートが建つことになった。
ある日、縁側で茶トラの猫が小さなネズミを生きたまま咥えて来て、床に放して手でじゃれながら遊んでいた。尻尾を除いて10円玉ぐらいの大きさの小さな小さな子ネズミだった。そこにヒマリと白黒の老猫が障子を開けて入って来た。
ヒマリの秘密は猫たちには隠せなかったし、猫たちは特に驚きも嫌がりもせず、ヒマリと一つになったマリを自然に受け入れていた。
『あんた何をやっているんだい?ネズミなんて捕まえて来て』
白黒の老猫が茶トラの猫にそう訊ねた。
つづく