『庭にいたら、この小さいネズミがワッと沢山やって来たんです。それを追い掛けたら、もうチョロチョロと面白い動きをするんで、もう少し遊ぼうと思って一匹だけ捕まえて来たって話です』
茶トラの猫が嬉しそうに答えた。
『まさか食べる気じゃないでしょうね?』
老猫が更に訊ねた。
『まさかまさか。もう野良猫じゃないんだから、ネズミなんて食べませんよ。遊びたいのなら、お貸ししますよ』
茶トラの猫は手でヒョイと小さなネズミを老猫の方に払った。
『可哀そうだよ。それに沢山って、どういうこと?』
ヒマリがそう言った。
『そのネズミはドブネズミでもクマネズミでもないし、ハツカネズミでもない。隣の雑木林のカヤネズミだね。きっと工事が始まって、追い出されたんだよ』
老猫がそう話した。
『そうだよ。草で編んだ家がなくなって家族みんなで逃げて来たんだよ』
その子ネズミが口をきいた。
『なんだ、話ができたんだ?』
茶トラの猫が空々しく言った。
つづく