6.1 棲み処を失ったカヤネズミの家族 ③

『庭にいたら、この小さいネズミがワッと沢山やって来たんです。それを追い掛けたら、もうチョロチョロと面白い動きをするんで、もう少し遊ぼうと思って一匹だけ捕まえて来たって話です』

 茶トラの猫が嬉しそうに答えた。

 

『まさか食べる気じゃないでしょうね?』

 老猫が更に訊ねた。

 

『まさかまさか。もう野良猫じゃないんだから、ネズミなんて食べませんよ。遊びたいのなら、お貸ししますよ』

 茶トラの猫は手でヒョイと小さなネズミを老猫の方に払った。

 

『可哀そうだよ。それに沢山って、どういうこと?』

 ヒマリがそう言った。

 

『そのネズミはドブネズミでもクマネズミでもないし、ハツカネズミでもない。隣の雑木林のカヤネズミだね。きっと工事が始まって、追い出されたんだよ』

 老猫がそう話した。

 

『そうだよ。草で編んだ家がなくなって家族みんなで逃げて来たんだよ』

 その子ネズミが口をきいた。

 

『なんだ、話ができたんだ?』

 茶トラの猫が空々しく言った。

 

 

  つづく

 

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