場内アナウンスで、キッカーの踏切位置から着地位置までの平らになっているテーブル部分の長さと、想定飛距離が紹介された。
大会の観戦エリアは幾つかあり、朝から既に人が集まっている。
「さあ、これから選手たちがスタートエリアに向かいます。盛大な拍手で送ってくださいねー」
というMCのケータさんの声に促され、観客は選手たちに拍手を送った。
午後の決勝には、ジュニア男子、オープン男子、女子公式戦予選から上位4名が進出、男子公式戦予選からは8名が進出できるようだった。
大会は公式戦がメインであるが、少しでも観客を増やすことと底辺を広げるためにオープンとジュニアも部門が設けられていた。
「昨日は腹が立ったけど、もうスッキリした。今日はオレたちと勝負だ!」
ユウヤはハルトの顔をしっかりと見た。
「ヒマリくん、こちらが大会の司会進行と実況をするMCのケータさん」
ツキハは小柄でがっしりした男性を紹介した。
凜とした青空が広がる3月後半の日曜日の朝、スキービックエア競技の大会当日を迎えた。
ヒマリは見つからないように、子猫の姿のままでその部屋に忍び込んだ。そして寝ているユウヤを見つけると、顔を近付け頬っぺたをペロッと舐め、ゆっくり布団の中に潜り込んで行った。
『なあ、お前、大丈夫なのか?勝てるのか?』
オコジョの子が心配そうに話して来た。
『勢いで言ってしまったけど、分からない。この姿の時って調子に乗っちゃうんだ。どうしよう?』
ヒマリは不安そうに答えた。
『神様のお言葉であれば、何の異存もありません』
長老猿は大木に向かって頭を下げた。